ここからは、在庫管理の具体的な取り組みに入っていきます。第4回・第5回では、対象品目の特性を把握するための調査方法に焦点を当て、在庫管理の精度向上につながる分析手法を紹介していきます。
第4回では、統計データをもとに品目の重要度を分類する「ABC分析」による優先順位の設定方法を解説します。
ABC分析は、在庫管理の精度を高めるうえで欠かせない判断材料であり、在庫量の設定やロケーション管理などに活用できる重要な指標となります。
統計データをもとに品目ごとの重要度を分類することで、管理のメリハリをつけ、効率的な運用につなげることができます。
今回は、Excelを使った分析手法を中心に、実務で活用できる形でABC分析の進め方を整理していきます。
在庫管理の基盤を固めるステップとして、ぜひ自社の品目に当てはめながら読み進めてみてください。
対象品特性調査
ABC分析とは
ABC分析とは、パレートの法則 (「8:2の法則」) の ”売上げの8割は商品の上位2割で生み出されている” という考え方を元に、対象品を指標に基づき、重要度の高い順にABCランクに分類する方法です。
Aランク:重要度大
・・・ 欠品が起きない様にいつでも在庫切れのない管理が必要
Bランク:重要度中
・・・ 在庫が切れそうになってからの発注で充分
Cランク:重要度低
・・・ 在庫が切れてからの発注でも可、また在庫せず受注対応でも可
指標については、経営指標の売上金額や在庫金額等で評価する場合もありますが、あくまで在庫管理での使用を前提に、在庫データ(出荷量やピッキング回数等)を指標として評価していきます。
Excelを使用したABC分析方法
Excelを使用した、ABC分析の分析方法を解説していきます。
1.統計データの準備
出庫数データシートを作成します。

サンプルデータは、12ヶ月分の月毎出庫数データから統計値を取得しています。
企業で扱う製品等は何らかの季節性を持つのが一般的です。平均値等を使用するときは、季節変動を含んだ、12ヶ月分(1年間)のデータを使用しましょう。
在庫管理導入初期は、手元にある取得可能なデータで充分です。精度は気にしません。
ただし、在庫管理導入後はデータの精度が上がってくるので、何度も分析を繰り返しましょう。
2.分析シートの準備
ABC_出庫数シートを作成し、分析対象品を入力します。
サンプルデータには、21種類の部品を登録しました。また、各部品にIDを振っています。

今回は指標項目として、出庫データのTotal出庫数を入力します。

3.指標項目の並べ替え
セル範囲 A1:C22 を選択します。

”データ”タブの”並べ替え”を選択します。

”並べ替え”のダイアログボックスが表示されます。
”先頭行をデータの見出しとして使用する”のチェックが入っている事を確認します。
”最優先されるキー”で出庫数を選択し、”順序”を大きい順(降順)にし、”OK”ボタンを押します。

ダイアログボックスが閉じ、並び替えが終了しました。

4.指標項目の比率計算
セルD2に計算式 =C2/$C$23 を入力し、セルの表示形式を”パーセンテージ”にします。
計算式の絶対参照を忘れないよう設定しましょう。

セルD2をコピーし、セル範囲D3:D22に貼り付けます。
Totalが100%となっているか確認しましょう。

5.指標項目の累計計算
セルE2に計算式 =SUM($D$2:D2) を入力し、セルの表示形式を”パーセンテージ”にします。
計算式の絶対参照を忘れないよう設定しましょう。

セルE2をコピーし、セル範囲E3:E22に貼り付けます。
最大値が100%となっているか確認しましょう。

6.指標項目のランク付け
ランク付けは累計を元に、下記範囲で設定します。
Aランク: 0 ~ 80%
Bランク: 80 ~ 90%
Cランク: 90 ~ 100%

また、指標とした在庫データ(出庫数やピッキング回数等)が0のものは、不動在庫となるので Dランク判定としています。
7.グラフの作成
ABC分析では、グラフ化することにより、各ランクの境界値が適正かどうか視覚的に確認ができるので、必ずグラフを作成しましょう。
80%及び90%付近を目視で確認し、適正なランク付けをおこないましょう。
系列1の系列値に出庫数をとり、集合縦棒グラフを作成します。軸ラベルにはIDを設定します。

系列2の系列値に累計をとり、2軸上の折れ線グラフを追加します。

ABCランク別に、縦棒グラフの色設定を変えてグラフは完成です。

ID18は、データからは累計比率が90%なのでBランクにしたいところですが、グラフを見るとBランクのグループからは水準が1段低下し、Cランクのグループと傾向が近いことが解ります。よって、Cランクが適正でしょう。
在庫管理での実践方法
在庫管理が導入されていない段階では、品目の優先順位が勘や経験に頼って決められていることが多く、過剰在庫や在庫不足、取りづらい場所への配置など、非効率な状況が頻繁に発生します。
対象品の優先順位は、在庫量の設定やロケーション管理を行ううえで重要な判断指標となります。 そのため、統計データをもとに優先順位を数値的に整理できるようにしておくことが重要です。
また、優先順位づけをある程度フォーマット化しておくことで、定期的な在庫評価が可能となり、受注変動にも柔軟に対応できるようになります。 この仕組みが整うことで、在庫管理の精度と現場対応力が大きく向上します。
次回は、在庫管理の運用に欠かせない「各種の発注方式」について詳しく解説します。 品目特性に応じた発注方式を選定することで、在庫量の適正化と安定供給の両立が可能になります。