在庫管理は、単なる「モノの出し入れ」ではありません。 それは、現場の混乱を防ぎ、売上とコストのバランスを整える“経営の土台”とも言える重要な活動です。
とはいえ、導入初期には「本当に必要なのか?」「今のままでも困っていない」といった声が上がることも少なくありません。 だからこそ、まずは在庫管理の基本を押さえ、目的やメリットを明確にしておくことが大切です。
この第1回では、在庫管理の定義・目的・導入メリットを整理し、現場での説得材料や、ぶれがちな目標の再確認に役立つ視点をお届けします。 在庫管理の「軸」をしっかりと掴み、次のステップへ進む準備を整えていきましょう。
在庫管理序論
在庫管理とは
一般的に在庫管理とは、必要な製品・部品を、必要な時に、必要な分だけ供給できるよう、”在庫の適正水準を維持するための活動"と定義されます。
この定義は一見シンプルですが、実務においては非常に奥深い意味を持ちます。
供給責任が果たされている状況では、在庫管理の重要性が見えにくくなることがあります。しかし、在庫管理を行わずに供給責任を達成している場合、その裏には過剰在庫が潜んでいるケースがほとんどです。過剰在庫は、保管コストの増加、資金の固定化、陳腐化リスクなど、企業経営にとって大きな負担となります。
一方で、欠品が発生した場合でも、「予想以上の需要があったから」といった理由で片付けられてしまうことがあります。これは、在庫管理の不備を需要変動のせいにしてしまう典型的な例です。本来、在庫管理とはこうした不確実性に備え、適切な在庫水準を維持することで、安定した供給体制を支える役割を担っています。
したがって、「適正水準の維持」は在庫管理の本質であり、単なる在庫の有無ではなく、過不足なく、効率的に供給できる状態を目指すことが重要です。 この視点を持つことで、在庫管理は単なる業務ではなく、経営資源の最適化に貢献する戦略的活動へ寄与する、価値ある活動として再認識されます。
在庫管理の目的
在庫管理は、企業活動の中でも特に「収益性」と「効率性」に直結する重要な業務です。単に在庫を持つ・減らすという視点ではなく、企業の成長と持続可能性を支える戦略的な役割を担っています。
その目的は、大きく分けて以下の2点に集約されます。
① 売上げを向上させること
・必要な量の在庫を適切に維持することで、欠品を防ぎ、販売機会の損失を回避できる。
・顧客満足度の向上にもつながり、リピート率や信頼性の向上が期待される。
② 物流コスト(経費)を削減すること
・過剰在庫の抑制により、保管スペースや在庫管理にかかる費用を低減できる。
・システム導入や業務の標準化により、作業時間の短縮と人件費の削減が可能となる。
①は主に「社外的影響(顧客・市場)」、②は「社内的影響(業務効率・コスト)」として論じられることが多く、売上とコストの両面からアプローチすることが、在庫管理の最適化において不可欠な視点となります。
在庫管理の導入メリット
在庫管理には多くのメリットがありますが、ここでは代表的なものを整理してご紹介します。
① 過剰在庫の削減
・不要な在庫を減らすことで、保管スペースに余裕が生まれ、次の施策や事業展開に活用できる。
・在庫の鮮度を保ち、資産の無駄を防ぐことで、経営資源の有効活用につながる。
② 欠品の防止
・「在庫が多いほど欠品は増える」という格言の通り、適正な在庫量を把握することで、必要な在庫が埋もれず、販売機会の損失を防げる。
③ 生産性の向上
・「探す・迷う・手待ち・やり直し」の4大ロスが減少し、リードタイムが短縮される。
・棚卸し作業の効率化にもつながり、現場の負担軽減が期待できる。
④ 品質の安定
・在庫回転率が向上することで、長期保管による劣化リスクが低減し、品質の安定につながる。
⑤ 管理コストの削減
・業務の標準化により、教育コストや人件費の削減にもつながる。
・入出庫データを活用した需要予測や発注基準の設定により、属人化を防ぎ、誰でも管理できる体制が構築できる。
さらに、以下のような副次的メリットも期待できます
・キャッシュフローの改善
・作業の安全性向上
・倉庫を顧客に公開できるレベルの整備状態を維持
このように、在庫管理の導入は単なる業務効率化にとどまらず、経営資源の最適化と企業価値の向上に直結する重要な施策です。
まとめ
在庫管理の基本を押さえることで、導入の意義や目的が明確になり、現場での説得力も格段に高まります。 「なんとなく在庫を持つ」から「目的を持って管理する」へーーその意識の転換こそが、在庫最適化への第一歩です。
次回は、在庫管理に欠かせない基本用語の定義と、適正在庫とは何かについて詳しく解説します。 言葉の理解が揃うことで、チーム内の認識が統一され、実務の精度とスピードが向上します。